「エモい」
三省堂の「今年の新語2016」で2位にランクインして有名になった言葉。
聞かない日はないくらい周りで使われていて、かく言う僕も適切だと信じている場面では積極的に使うようにしています。
先日、職場の後輩に「エモい」の説明を求められたときに、
「言葉にできないからエモいって表現するんだけど、強いて言うなら、哀愁的、ノスタルジック、趣深いとかが近い言葉だと思うよ。例えば、花火とか滑走路の誘導灯とか落ち着いた綺麗さのあるものに使われるかな…」
自分なりの説明はできたつもりなのだけれど、これが世間一般的な「エモい」なのかは定かではないと感じ、早速調べてみました。
エモいは、英語の「emotional」を由来とした、「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く訴えかける心の動き」などを意味する日本語の形容詞。感情が揺さぶられたときや、気持ちをストレートに表現できないとき、「哀愁を帯びた様」などに用いられる。
出典 エモい-Wikipedia
「感情が動かされた状態」って広すぎない?
そもそも「エモい」って「楽しい」や「悲しい」などの感情を表現する言葉なんですか?最近若者が使っている使用方法だと少し違う気がしますね。
「僕は今、悲しい」とは言うけど、
「僕は今、エモい」って言わない気がします。
現在の「僕」の状況や状態がエモいのならこの「僕は今、エモい」は成り立つかも知れませんが、少なくとも今の若者言葉では、感情表現として「エモい」は使えないと言っていいでしょう。
つまり、「エモい」というのは「面白い」や「かっこいい」と同様に対象物やシチュエーションなどに対する感動を表す形容詞。
元々は音楽のジャンルの一つである「イーモウ(Emo)」からきており、メロディアスで哀愁的な音楽性と切ない心情を吐露する歌詞が特徴的なロックミュージックを指す。音楽シーンでは1980年代から使われていた。パンクロックの一種である「エモーショナル・ハードコア」の略称であるとも言われる。エモーショナル・ハードコアは、メロディアスな音楽に感情的な歌詞をのせたロックミュージックで、ここから派生して激情的・感動的な音楽を「エモい」と表現している。
出典 エモい-Wikipedia
ルーツは音楽にあります。ここに書かれている哀愁的や切なさはしっくりくるんですけど、激情的・感動的というのは分かりにくいですね。
激情的、つまり感情が高ぶれば何でも「エモい」って表現して良いってことですよね。言葉通りに解釈すればそれで間違っていないです。
たしかにあらゆるすごいものに対して「エモい」と表現する若者もいるし、その若者の用法も正しいことになります。
でも勝手なイメージなんですけど、「エモい」を「やばい」などの汎用性の高すぎる言葉ではなく、「エモい」をある程度限定的な使い方をしている人の方が圧倒的に多い気がします。
例えば、新型のiPhoneを見て「スタイリッシュでカッコいい」と思って興奮したら感情は高ぶるので「超エモい!」と言う人がいたとします。
たしかに用法としては間違ってないのかも知れませんが、それなら「スタイリッシュで超カッコいい!」って言えば良くないですか?
面白いと思ったなら「面白い」って言えば良いし、可愛いと思ったなら「可愛い」と言えば良い。
つまり、感情を動かされたら「エモい」を使う用法は「やばい」などの汎用性の高すぎる言葉同様に人間の脳を思考停止に陥れかねません。
確かに何にでも使えるのは便利ですが、表現力が稚拙になる副作用があるということです。
ならどういう対象にいつ使えば良いの?となりますね。
他の言葉で容易に表現できるものは適切な言葉を使った方が良いので、まず「安易に言葉で表現できない」という使用条件を付け加えるべきです。
次にイメージについてです。
懐古的、自然的、芸術的、哀愁的なものに「エモい」という言葉を使う傾向はあると思います。
逆に無機質なものや人工的なもの、前衛的なものに対してはあまり「エモい」を使わない印象です。これらに懐古的や芸術的な要素が加われば「エモい」と表現できることは十分にありますが、、
例えば、ゲームボーイなんかは人工的と懐古的が並存してます。
最後に、
ここまで「エモい」が流行したのは、「エモい」という表現に適している言葉が現代の日本になかったからだと考えられます。
あらゆるものを「カッコいい」や「面白い」「鮮やか」「愛くるしい」など現代日本にある言葉で表現しようとした時に適切に表現できない対象物が存在したということです。いわゆる形容表現の穴です。
それが「エモい」だったということ。
メディアアーティストの落合陽一さんは「エモい」を古代の「もののあはれ」や「いとをかし」であると言っています。
「あはれ」や「をかし」を直訳すると「趣深い、風情がある」という意味になります。
「趣深い」は古典の教師や研究者を除けば普段の生活で一切と言っていいほど使わないですよね。
つまり、その昔使われていた表現が形を変えて現代の日本に現れたということです。
昔の歌人が現代にいれば「この詩すごくエモい!」って言っていたようなものです。古典の教科書の現代語訳が「をかし(エモい)」になる日も近いですね。
まとめると、
1.心が動かされたけど言葉で上手く表現できないものに使う
2.懐古的、自然的、芸術的、哀愁的なものやシチュエーションに使う
3.直訳すると趣深い
これが僕が思う正しい用法と意味です。
え?趣深いの意味?
………
ググれば良いと思います。